ヘッドホン難聴について | さいとうクリニック耳鼻咽喉科

ヘッドホン難聴について

<ヘッドホン難聴・イヤホン難聴・ロック難聴>

大音量で音楽を聴くことがなぜ難聴のリスクを高めるのでしょうか?

音を感じるためには、内耳の中の「有毛細胞」の先端にある「聴毛」が音の振動をキャッチし、それを電気信号に変換して、脳に伝達する、という一連の流れが必要です。ところが、この聴毛は非常に繊細なので、大きな音=大きな振動に長時間晒されることによって、抜け落ちたり、傷ついたりすることがあります。そうすると、音の振動をキャッチできなくなり、その結果音が聞こえなくなるのです。これは騒音や強大音により難聴が生じたもので、その原因によって「ヘッドホン難聴」「イヤホン難聴」「ロック難聴」とも呼ばれます。
有毛細胞の損傷は短時間の暴露でも起きうるのです。
80dbで40時間/週以上、90dbで4時間/週以上、98dbで75分/週以上で音響性難聴のリスクがあります。100db以上であれば急性難聴のリスクとなります。
その結果、両耳の聞こえが低下するだけでなく、人によっては、耳鳴りなどの症状があらわれる場合もあります。
また、一度傷ついた聴毛や有毛細胞が再生することはありません。
失われた聴力を完全に回復させることはほぼ不可能で、大音量で音楽を聴き続けた結果は想像しているよりはるかに深刻です。

難聴のリスクを回避するには

ヘッドホンの最大出力は100-120dbくらいですから、60%以下の音量に設定するとよいでしょう。ノイズキャンセリング機能がついたヘッドホンなら周りの騒音を抑えてくれるので、より小さな音量で楽しむことができます。
また、高音域がでやすいヘッドホンの方が耳への負担が大きいこともわかっており、密閉型のヘッドホンの方が少ない音量で十分に音を聞き取ることができるのでボリュームを上げすぎることを防げます。
ヘッドホンで音楽を聴いたら、耳に休息を与える習慣を持つことも大切で、1時間以上連続で聴かないようにしましょう。1日の合計使用時間が1時間を超えないことが理想です。
ヘッドホン難聴は重症化すると完治が難しくなってしまいます。
そうなる前に少しでも耳に異常を感じたら、すぐに耳鼻咽喉科を受診するようにしてください。
早期であれば投薬治療などで治る可能性も高くなります。

聞こえの仕組み

①耳介
耳介が空気の振動を集める

②鼓膜
鼓膜が空気の振動をキャッチ

③耳小骨
耳小骨が振動を増幅する

④蝸牛
蝸牛の中のリンパ液が振動

⑤有毛細胞
リンパ液の振動により「有毛細胞」が刺激を受けて、その刺激を電気信号に変える

⑥蝸牛神経
電気信号が、蝸牛の中の神経細胞から蝸牛神経を通って、脳に伝わる